二〇二四年 十二月 六日 小雪〔 二十四節気 〕
布 : コール天(木綿)[ 天龍社 ] 、 髭代赭紬 [ 古布 / 大正期 ]、帆布木綿[ 古布 / 大正 ‐ 昭和 ]
手縫糸 : 素鼠練絹糸
被写体 / 身長 160 cm
‐ 身衣 ‐
身丈 (前) 約 110 cm
身丈 (横後) 約 120 cm
裄丈 約 73 cm
身幅 約 61 cm
裾幅 約 136 cm
袖口囲 約 26 cm
‐ 帯 ‐
縦 約 9 cm
横 約 63 cm
紐丈 約 75 cm
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静岡県の天龍社繊維産地は天竜川以東から成る別珍・コール天の生産地。明治中期から天龍社を発端に大まかに剪毛(別珍)・カッチング(コール天)と、仕上げの毛焼き、染色工程を経て、天からふる光がすべるような光沢感の木綿布が現れる。布との出会いは自らが動くことから起こり、移動した季節が影響する心の機微で手にとる素材は変化する。今回は大きな一歩を踏みだせた個展を終え、力みが緩んだ冬の入り口にたって無性に別珍やコール天に触れたくなって家族で静岡に向かった旅路で出会った灰青色のコール天布。
古布の髭紬(代赭色)は、使い古した網を糸にして織り込む江戸中期の絹織物「網織紬」を源流に滋賀県湖東産地で織られたであろう古布。網を切った時のひげ状の切り口が布の表面に出てくる糸で織られた大正期の髭紬の着物をほどき入れ、帯芯に古布の帆布木綿を使用。コール天の残布で紐を成し、羊毛太糸を中に詰め込むことで立体と存在感がうまれた紐と帯の継ぎ目に、同じく紐状のコール天布を屈折させ縫い留め装飾。
和服の衿抜きのように着ることを念頭におき前身頃の裁断。谷状の首元は深めに切り込み、幅30㎝のまま裾までおろし前垂の裾縁には髭紬(代赭色)の端裂を縫う。袖は肩で接がず布幅最大に折って使用し、袖口付近は小襞を寄せて切り替えた箇所に同じく髭紬(代赭色)の端裂を縁飾りに縫っておさめる。後身頃の肩甲骨下付近からミミを接いだ大判布を小襞を寄せながら接いでいき、脇下に縫い目がないので横から見た時にのびやかなコール天の光がまるみを帯びて包まれている雰囲気を与えています。肌心地のよい布に触れている午後時、裁断机に木々の合間をぬって光がもれ、衣を照らしてきたのでその光をおって素鼠色の絹糸を刺した。
ご縁がありましたら幸いです。