二〇二三年 七月 六日 

光綿亜民黄水羽織

布 : 綿 [ 播州 ] 、 亜麻 [ 湖東 ]
手縫糸 : 白金糸
染 : 山桜 [ 生薬 ・ 桜皮 ]

身長 160 cm [女性]
前身丈 約 83 cm
前身幅(片側) 約 90 cm
後身丈  約 70 cm

袖丈 約 45 cm
袖囲 約 50 cm

¥ 38,000 + tax

播州織は兵庫県西脇市にて発展した織物の地場産業。綿で薄手の先染め織物が得意で染色に不可欠である豊富な水資源 ( 加古川・杉原川・野間川 ) に恵まれていたことが播州織物が二百年以上栄える基盤となっている。倉庫から持ち帰った承和色の薄手綿は反応染料であるからと今までなら手に取らなかった布だが、今あらためて衣服を初めて作ろうと思った二十歳の初心(うぶ)な頃の雰囲気をかみしめようとしている僕は、単純に綺麗と感じたことを受け入れることができて持ち返った。たとえば衣服の素材や、何で染められているのかが衣服を選ぶ基準ではなかった頃の、ただ見ているだけで心が動いたり、嫌なことがあってもその衣服を装えば一気に楽しくなって見ている世界が一変するような。衣服と心の縁というか結びつきのそういう不可思議な力に魅せられた自身の、衣という神秘をもう一度とらえなおしていこうという思いに駆られた。理由はわからない。ただそういう想いが内底からどっと湧いてきたから仕方がない。また流れのままに浮きつ沈みつ流れてゆけばいい。それと同時に草根木皮染や樹皮、雁皮繊維採取から着想された物のより深部に潜りたいという想いも相乗してより強まった。囚われを見つめ直すことで内在する原石の未だみぬ部分が発光するような気配がある。なきうみという場所で新たに生活を作っていく時にこういう思惑はうってつけだと思い、中庸に立って物事を再確認していく。自然繊維も化学繊維も草木染色も化学染料もすべては地球からうまれたものであり、星で繋がった人同士の交歓をどういう心をもって受けとっていけるかだと、今の僕はそう感じています。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

滋賀の湖東産地で織られた亜麻素材の原生はヨーロッパの北フランス。経緯ともに紡績亜麻で、今まで出会った亜麻布も様々質感を撫でてきましたが、湖東産地で出会ったこの布は微少に光沢すら感じ心に響いてきた。陽のとどかない所に眠っていた布は約四十年前に織られたもの。山桜の樹木を伐採している所に立ち会ったので、桜の皮を冬に剥せていただいていたもので染色。鉄媒染で美しい絹鼠色となった。

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薄手の綿を扱うことも中々ないことだが、今年はむしょうに陽照る夏に薄手のものを羽織るイメージが頭から離れない。そう想って静かな早朝に裁断から縫製まで何かにとりつかれたように、淡々と紡いだ形の衣。袖があるので羽織ではあるのだけれど首に巻くストールのような、側面を縫っていないので貫頭衣のような、形式にとらわれない自由な衣が生まれた。一番シンプルな装いとしてはふわっと羽織って、後身頃に付いている紐で結えばいい。けれども写真で見せたように、首に巻いたり、袖に手を通さずに着て紐を結わえたりしてもいい。決まりはありません。楽しい着こなしで、夏のお供に如何でしょうか。

 

ご縁がありましたら幸いです。

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