二〇二五年 一月 二十三日 大寒〔 二十四節気 〕 / 下弦〔 月 〕
布 : 別珍 [ 天龍社 ]
手縫糸 : 鳳梨糸[ 丹後 ]、柿渋染練糸[ 丹後 ]
被写体 / 身長 160 cm
身丈 約 62 cm
身幅 約 58 cm
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静岡県の天龍社繊維産地は天竜川以東から成る別珍・コール天の生産地。明治中期から天龍社を発端に大まかに剪毛・カッチングと、仕上げの毛焼き、染色工程を経て、天からふる光がすべるような光沢感の木綿布が現れる。冬の色のない世界に至って、別珍やコール天の手触りを想い出し家族で静岡に向かった旅路で出会った唐茶色の別珍。コール天と同じく表面に毛羽や輪奈を出した滑らかなパイル(添毛)織物ですが、畝のない凪いだつややかな布を別珍という愛くるしい名で呼ばれている。
冬のスタイリングを考えた時に僕は外でもない内でもない中間の、曖昧な、直着や袖無の羽織から組み立てていくことが多い。身に堪える寒さの季節には、個人的な趣向が手を伝うことの回数が多いのでその想いに抗わず、内側に沁み出てきたものをとらえて形にしていきました。前身頃で重なって交差しているが留め具などでとどめているわけでなく、見えているそのままの形を保って縫い込んであるので「被り」ということで直着と呼称しています。後身頃のうなじ付近は谷の字でおさめ、そこで斜めに切り替え肩落ちの違和感をおさえ込み、前身頃と後身頃を脇下側面よりも前のあばら骨付近で接ぐことで後身頃に付けた紐を絞って結ぶ際に身体への密着がよく成された形が美しいと感じました。
ご縁がありましたら幸いです。