二〇二四年 八月 二十七日 立秋〔 二十四節気 〕 / 下弦〔 月 〕
布 : 木綿[ 遠州 ] 、 正絹古布 [ 志那緞子 / 中国 ]
手縫糸 : 正絹双糸、志那緞子緯残糸、金糸
被写体 / 身長 160 cm
‐ 身衣 ‐
身丈 (前)約 122 cm
身丈 (後)約 128 cm
身幅 約 61 cm
裾幅 約 115 cm
裄丈 約 66 cm
頭囲 約 56 cm
袖囲 約 40 cm
‐ 帯 ‐
縦 約 15 cm
横 約 5 cm
紐丈 (片) 約 90 cm
¥ 71,000 + tax
八月の生命の高まりに反ることなく、汗だくになって様々な物事に取り組んだ。京都亀岡で見たことも触れたこともない手仕事の染色布に出会ってから興奮気味に今度一緒に染色をしたいとお願いすると快く受けて下さったので合宿に向かうことになって一緒に炎天下のなかその手ほどきを受けた。おさえておく要点が箇所箇所にあるのみで、あとは変わった技法も、小難しいこともないところが一段とその方を遠ざけた。自身の手の感触、体感からえた直感が多くを占めていたから、どんな資料よりもわかりやすく、そしてわからない。僕よりも四十三年も多く生きておられるからこその体感と手癖。本当に良い勉強をさせてもらった。お迎えした美しい布は個展でお披露目します。その帰りに丹波篠山が近いとGoogle map にうつったので、遠回りして古布をいつもお世話になっている方のもとへ。かれこれ五年ほどまたしては伺っているが、今回は新しい住居に移り住んでからの訪問になったので約二、三年ぶり。相変わらず気さくな絡みかたでお話しているなかで飼っているガチョウや蓮や野草の話になって「布なんかええからうちにきな」と御自宅へ。古い時代の布のことなら図鑑や本よりも知識が豊富な方だから、選んでいる生活に僕は少し期待を膨らませながら向かうと、期待通りの優雅さで、そして愛している野草や動物や竹林と家の調和が見事だった。そして極めつけはご主人の木目へのまなざし、家具や樹木への愛がたっぷりつまった畳の部屋と、様々な大きさの篠笛や尺八、ギターにフルートが所狭しと並んでいる風景。そこでいくつか音色を聴かせていただいた時に感じた心の温気。これからの余生をどう生きようかというその余裕からくる優しさ。優雅な暮らしに触れて僕は益々生きたくなった。こんなに美しい漂いが日本のいたるところに在るんだとそのとき、そのご夫婦をみて直感した。その方も今年七十八歳を迎えたらしい。新天地に環境を変え、ようやく新しい一歩目だと思ったその時から繋ぎの縁が目に見えて多い気がしている。僕に巡ってくるご縁は受け入れて大切に温めていきたい。そして、なきうみからその体感を手渡していけることを願う。
主に遠州織物の木綿に、前記の丹波篠山で出会った中国の志那緞子“しなどんす”(江戸期の物らしいが曖昧だったので今回は表記していません)を、ミミの素色部分と黒地の色彩が美しかったのでそのまま袖元に使用。襞山は妻の手仕事で今回は脇下から腹、背にかけて菱形でその並びは規則性のない配置となっている。志那緞子の緯糸を縫糸にしているので手間ですが親和性がその馴染み感を与えている気がする。形は和服の直線を基軸に脇下に襞をたっぷり詰めて袖元にかけて緩やかな曲線ですっきりした印象。前身頃の裾には志那緞子を配置して、背後から包み込んだ布と縫い合わせる。段差が六㎝程あってそのままを活かした。帯は志那緞子を長方形に包み、中心で接いでその中央上部に遠州木綿紐を合わせ縫い。その周辺に金糸を散りばめた。どのような刺繍をしようとは思わず、西側の森を見ては縫うを繰り返す。写真で紹介しているように僕の思考内では三パターンを紹介しましたがお好きなように結わえて下さい。前身頃中心の右側のみにポケットを備え付けています。
志那緞子の余布分のみなので数点ですが、受注生産致します。その際、金糸の刺し子具合が多少変化しますが一点物の風合いとしてお見受けしていただけたら嬉しいです。次回から一日一衣の更新は控え、個展での展開にご期待下さい。
それでは、ご縁がありましたら幸いです。