二〇二三年 一月十五日 雉始雊

毛羽山襞長衣

布 : 起毛木綿[ 遠州 ]、靴下(再)[ 奈良広陵 ]
手縫糸 : 古手紡木綿糸[ 会津 ]

身長 160 cm [女性]
前身丈 約 123 cm
後身丈  約 124 cm
身幅 (脇下)約 54 cm

身幅 (裾)約 115 cm
肩幅  約 42 cm
袖丈 約 58 cm
紐丈 約 80 cm

頭囲 約 60 cm
手首囲  約 30 cm

¥ 51,000 + tax

今回使用した布は微起毛による肌ごこちの良さが、朝の光景によこたわる地をまろく包みこむ霜のようで、おきどけの直感そのままに布棚から引っ張りだした。低速のシャトル織機で織られた布は「バフ」という名がついている。これは乗馬時に鞍が滑らないように鞍の下に敷かれる〝馬布〟から着想を得て織られているので強度があるにもかかわらず、定番のバフよりも細番手の糸を使用しているからしなやかで柔らかい。霜とは言ったが、うまれたてのひよわな小鳥の羽のようでもある。先染めの色調で灰色の布風景に黒い斑点が点在している。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

両手の袖、首のリブに靴下を配置。奈良県広陵町の靴下工場にて不良、欠損が原因で世間に行き届かなかったもの。それでも、廃棄や焼却を選ばずどうにか再利用できないかと大切に保管されつづけた靴下が私の元へやってきて三年の歳月がすぎた。今、目を向けるべきは溢れでたものと、それらを掬い上げてまた息を吹き込もうとしていた方々への敬意。世に漂うすばらしい技術に寄り添い、土に根ざした精神で再生することでより個が輝きをまして、欠点が光をたぎらせるように生まれ変わると信じて手を動かし続ける。靴下の先染糸は白膠木に付着するコブの五倍子。夕から夜に変わる頃の仄かな黒灰。

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” 襞山 ”と表現するスモッキング技法によって布に陰影が現れる。今回は袖の二ヶ所に配置することにより腕抜き着用時にみることができるもたっとした形をとり入れた。前身頃の両脇に大きな襞をつくることで動的な所作に負担がなく、斜めや側面から見た際に同素材の前掛けをしているかのような錯覚がおきるほど深い襞。その奥に腰紐を縫い込んで、その先端部分には絹屑の不織布をあしらった。両側に深いポケットがあり、後身頃の中央には山襞の光芒をはしらせ、前と同じく両脇に切れ目、そこに細かい襞をつくっている。布の感度は木綿なので皮膚呼吸しやすく肌馴染みよいので春、秋、冬と身体に寄り添ってくれると思います。今回使用の布は新たに生産されていないので手元に持っている限りですが、ご要望があれば数着は仕立てられます。

ご縁がありましたら、幸いです。

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