二〇二三年 六月 二十二日 夏至
布 ： 木綿 ［ 播州 ］ 、 生平麻 ［ 手績手織 ／ 湖南省 ］
手縫糸 ： 藍染生糸 、鳳梨糸［ 丹後 ］
染 ： 本藍 ［ 生薬 ・ 藍葉、藍実 ］、白膠木［ 生薬 ・ 五倍子 ］
身長 160 cm ［ 女性 ］
前身丈 約 125 cm
後身丈 約 130 cm
身幅 [ 帯 ] 約 95 cm
身幅 （ 裾 ）約 90 cm
上半身 [ 幅 ] 約 32 cm
紐丈 約 58 cm
¥ 48,000 + tax
たった一つの創造から、支流したいくつもの興味や自身に響いてきた律動にあらがうことなく身をもって体感してこそ、そのことを続けたいかそうでないかという選択にうつっていける。何事もその世界に身を投じてみないと肌で感覚しないとわからないからやってみるというのが気質にある。そのことでずいぶんと遠回りしたり近道できたり右往左往した日々だが、そのことで希む光景が澄んで具体的になればなるほど僕の眼はよけいなものに災いされることなくいつも真っすぐに対象の深部に入っていける。手間がかかるけれどその気質についやした時間はかけがえのないものとして地層してゆく。これはもう生まれ持ってのもとして愛でてやるほうが心がかるく、自身で瓦屋根を葺いている単調な作業には自問自答が、樹木のゆれや、鳥の声にまみれて淡々とくりかえされているなかで自身を深め、理解しはじめた。そしてとらえたい景色を気質にしたがってより深いところに手をのばして触れにいくことによって、その枠の外にある世界に対してどれほども謙虚な態度で、心で接することができると気づいた。美しいと傍に置いてある布になるまでに触れた手（人）がいくつもある。人と接して生かされて、はじめて僕は自身の深部に触れられるのだと水無月の水浸く草はらが黒土からつややかに青しげるなか、これから暮らす風景に心をときめかせていられるように今日も身体を動かして、汗まみれになって生きている。
播州織は兵庫県西脇市にて発展した織物の地場産業。綿で薄手の先染め織物が得意で染色に不可欠である豊富な水資源 ( 加古川・杉原川・野間川 ) に恵まれていたことが播州織物が二百年以上栄える基盤となっている。糸を本藍で染めてから織られたものを白膠木（ヌルデ）の葉に寄生する虫こぶを湯煎消毒したのち天日で乾かしたもので重ね染色。五倍子（ふし）という名で黒色を染める草木染料として用いられているが、五倍子は生薬名なのであえて白膠木という木を表記しています。江戸時代の鉄漿はこの五倍子を用いているが、薬効を基盤に培われた風習が古から現まで続いていることにも目を向けれたらと思います。
前掛動衣（エプロンドレス）は、女性への憧憬としてある形で大切にあたためている衣服の一つ。気が付いたらこういう形を制作しているくらい手に馴染んでいる。前掛け（エプロン）とは違い働く衣服の機能だけではなく、より日々そのものでもあるし、動作をするたびに布が揺れる一瞬一瞬に美しさがある。前掛動衣を妻も愛用していて一日中着ているのをよく見かける。いつも中厚の布でしつらえることが多いが、もう夏の雰囲気でもあるから薄手の綿を使用。薄いが透け感はなく目の詰まったものを選択し、軽さがあるのでたくさん襞（ドレープ）がでるように布を潤沢に用いた。前身頃は修道女の衣服によくみられるような大きめの襞のつくり方で、後身頃は小さい襞をよせあつめて。和服のようなかさね方ではなく南アジアのブータンやインドの僧が肩掛けしている装いを基礎に前身頃の上半身に意匠をこらす。深藍色と相性の良い手績手織の生平麻は涼感でいてしっかりと固さもあるので動きに違和感のない部位に配置。両側面にポケットをあしらい、帯の片方に紐通しがあるのでそこに通して、前で結わえる。洗濯するにつれて生平麻に藍が微少に含まれ（水色や藍色になることはない）馴染んでいくのも衣が育つ愉しみの一つ。i a iで制作する前掛動衣は身丈を長めにしているので、お召しになられる方の身長に合わせて調整致します。お気軽にご相談下さい。ご縁がありましたら幸いです。
