二〇二五年 六月 十八日 入梅〔 二十四節気 〕 / 更待月〔 月 〕
布 : 西洋亜麻[ 湖東 ] 、 紅緋紬 [ 古布 / 明治後期 ]
手縫糸 : 亜麻残糸[ 遠州 ] 、紅緋絹糸[ 丹後 ]
被写体 / 身長 160 cm
身丈 約 128 cm
腰囲 約 96 cm
裾幅 約 120 cm
紐丈 約 90 cm
¥ 48,000 + tax
たとえば、日本に生息する蛍は50種類、そのなかで10種類が光る成虫であり、とくに3種類の蛍だけを僕は「ほたる」だと認識していた。何なら、形が蛍のような感じを受けても、光らないから蛍じゃないというふうにまで。スズメバチの成虫は、子供の口まで固形の餌を運びいれて、固形ではなくほぼ液体となったものを子供に与えてもらって命をつなぐ。自然界では親か子か、というのは関係ない種族もいる。キシリトールは白樺の樹液から得られる糖の一種ということを、漆について深めていくなかで最近知った。日本の土は、1cmの土ができるのに100年かかるということは、スコップで簡単に100年以上前の環境に出会えてしまうということ。娘達と不思議に感じたことを調べたり、自身の興味に潜っていけばこそ本当に僕が目にしていることは地球の塵くらいの小さな現象にすぎない。知らないままで、決めつけていたことだらけだということ。そういう情感を暮らしの真中においておくと、心に入ってくる機微、小さく揺れうごいた感性や直感のはたらきは、自身がいる環境と心が絶妙に合い、生じて、宇宙的なものが感じ取れている瞬間なのかもしれない。見えていないことがほとんどなんだということを想えば、自ずから万物とかかわりあっていくたびに内側をふりむいて、そこから自身の仕事にいそしめる。常に、中身だけのところから出発できる。こういう気付きを与えてくれる家族との日々、i a i 〔 居相 〕の衣を暮らしにひびかせて下さっている全ての方々に感謝がたえない。本当にいつもありがとうございます。奇跡のような普通の生活を何よりも大切に思っています。
紅緋(べにひ)は冴えた黄みがかった赤色のこと。陽に照らされると汗ばむ日に、清々しい赤さの紬着物に出会った。仕立てられたのは明治後期らしいが、合成染料か草木染色か判断がつかないので今回は記載していません。元々、滋賀県湖東産地で着分だけ譲っていただいた西洋亜麻も紅緋に近い色味であったので、二つをひとところに。着物はすべてを反物に解かず、手縫いで合わさっている箇所をさらになぞったり、新たに縫い合わせたりして和服の形ありきで形成していく。前身頃は谷字で合わせ、襟を新調。そのまま被って着用いただきながら後身頃幅を斜めにたっぷりとっているため腰に巻いて前で結わえる仕様。両の側にポケット、腰位置で切り替え西洋亜麻に山襞( スモッキング手法 )をベガ、デネブ、アルタイルを結んだ夏の大三角のような文様に。紐の主体は西洋亜麻を細く裁断して作り、先端に遠州産地で織られている亜麻の経糸残糸と、古い大麻を編みこみ装飾。
ご縁がありましたら幸いです。