二〇二三年 一月 三十一日
布 : 起毛木綿[ 遠州 ]
手縫糸 : 和紡五倍子染糸 [ 尾州 ]
身長 175 cm [男性]
身丈 約 104 cm
腰囲 約 104 cm
股下 約 72 cm
裾囲 約 46 cm
¥ 35,000 + tax
遠州 (浜松)の二種を混合して使用。腰紐、足紐は低速のシャトル織機で織られた馬布。これは乗馬時に鞍が滑らないように鞍の下に敷かれる〝馬布〟から着想を得て織られているので強度があるにもかかわらず、定番のバフよりも細番手の糸を使用しているからしなやかで柔らかい。微起毛による肌ごこちの良さは朝の光景によこたわる霜そのもので、土や石やをまろく包みこむような質感を感じた。もう一種の下衣の主となっているのは微起毛の馬布と性質が違い、甘撚り糸を用いてオックス(平織り)で織られた布。甘撚りに起毛されているのでカシミヤのような風合い。布に柔らかなコシもあるので、足首を紐で結わえることで脚に立体な膨らみがうまれ、動作の余韻が衣にのこる具合がいい。憲法色の緯糸に白鼠色の経糸で織られているので、表地に見える表情は全体的に鼠色ですが、起毛の奥の土台に茶褐色を感じます。
着想は韓服でみられる下衣(パジ)から。コン・テヨン/高 二三 著「目でみる 李朝時代」から朝鮮の生活を眼で旅していた時に、簡素な労働着や、白一色の世界に身を包んでいる人々が美しくこの表情は、身体は、何を栄養に咲いてどんな風景をたべればこういう衣と布の合わせがおもいつくのかと、これは藤本巧さんの写真を見ていても湧いてくる心情で、僕の好きな衣形の一つ。いつか当時の生活は残っていなくともその名残や刷新された韓国の風土を吸いに旅にでたい。いつものことだが衣をほどいて型をとってその伝統民衣をなぞった衣制作ではなく、眼の情報からどこまでも自由は発想をとがめないために、どうとでもなせる想像力に根を据えて制作。一枚の布からこういう接ぎ方は、縫い方はどうだろうかと一衣のなかでくりかえされる試行錯誤は制作する心の糧となり明日に繋がる確かな光芒となっててのひらにのこる。前身頃と後身頃という縫い方ではなく、左右脚の中心で縫い合わせることで側面の身体を包む見え方がやわらかい印象。その継ぎ目は手で刺し子。足紐を結わえれば脚のふくらみが浮かばり、動作にも良い作用がありました。腰も紐で調整するので履くというよりも巻くとか結うという感覚がある衣です。
ご縁がありましたら、幸いです。