二〇二二年 十月十日 満月

野蚕山居涅羽織

布 : 野蚕 (柞蚕) [ 中国湖南省 ]
手縫糸 : 野蚕残糸[ 中国湖南省 ]
染 : 墨 ( 松煙 ) 、冷鉱泉[ 生薬 : 墨炭 ]

身長 170 cm [男性]
身長 175 cm[男性]
前身丈 約 75 cm
後身丈  約 83 cm

身幅 約 80 cm
肩囲 約 48 cm
袖囲 約 34 cm
袖丈 [首~袖元]約 75 cm

¥ 41,000 + tax

丁度、中国少数民族の民衣に触れていた頃に、中国柞蚕布と出会った。織る生活にむりのない小幅を用いて、糸をほどけばまた布にもどせる簡単な形。自らの手で原始的な作法で織り上げられた布鋏で切り込みを入れることは到底できない。そういった精神性が簡素な縫製で着るという知恵を紡いだ。さらにその土地の風土、素材、そして生活に密着した工夫の上にたって自ずから生みだした皮膚の延長。それが民族衣装の根源だとしたら、僕はその精神性を紡ぎながらも、現代の生活になぞらえ衣を創る。自身の生活からたどる風土、資源、心のいぶきを純粋に漂わせられたら民族衣装の精神を現世につなぎ込め、古の息づかいと今を讃えられるのかもしれない。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

機織工場へ出向くと、時折いつの時代にどの国で誰が織った布かさえ分からないものが在庫の奥底へ眠っていることはよくある。サンプルとして諸外国から持ち帰ったものらしい。布を撫で手からつたわる何か説明はつかないけれど堪らなく良いという直感が心髄に揺れ、織り手 ( 個々 )の表情、性格が布の表面ににじみもれでていてほれぼれとする。初秋の気配がした生温い午後に、窓からあるいてくる風を受けて、山そのもののような布を自然と手に取っていた。心地好い織物に触れて作業することの心地好さがやはりある。素材を撫でるたびに歓んでいられることを想像して布を選んでいたりする時が多い。古布、草木染、天然素材といった情報よりも直に触れまず感動を入り口にしている。こうでなければいけないという囚われの眼で触れてはいけないと心掛けている。すでに地球上に存在する物への敬意を忘れてはならないと心にとめている。中国で原産の柞蚕で織られた布を遠州の注染工場にある大釜で一気に五十m染めることで斑や起伏が生じた。その布を冷鉱泉ですすぎ日に晒し衣へ。

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i a iとしての定番となっている簡素な羽織を、中国少数民衣になぞらえて制作。しかし直線断ちは用いつつも肩周辺の可動域は確保したいのと、首周辺も直線だと着づらい要因になるため、いつものように自由裁断で立体の身体がストレスなくおさまるようにした。緯糸にうってある柞蚕の真綿が三種あって糸の太さで表情を変えている。山のけもののような質感に墨の何者をもかくすような暗色が山の静謐さをまとわらせている。さっと羽織って前開きできるほか前を閉じて布包みスナップで留めることも可能。布裾にはミミをそのまま使って厚手の布にかろやかさが加わり、裂けや解れを抑制するために二度ミシンステッチを施した。もけもけの真綿が着るごとに表面に出てくることで山がふくらみをみせてゆく。毛羽立つ所々を大切な草木を剪定するように鋏で切って、衣の変化と共に良き時をお過ごして下さい。

 

ご縁がありましたら、幸いです。

 

 

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