二〇二五年 一月 二十九日 大寒〔 二十四節気 〕 / 新月〔 月 〕
布 : コール天 [ 天龍社 ] 、起毛木綿[ 遠州 ]、羊毛[ 尾州 ]
手縫糸 : 漆黒絹糸[ 丹後 ] 、天蚕糸[ 北但馬 ]
被写体 / 身長 160 cm
‐ 身衣 ‐
身丈(前) 約 127 cm
身丈(後) 約 131 cm
身幅 約 62 cm
裾幅 約 104 cm
肩囲 約 64 cm
袖口囲 約 32 cm
裄丈 約 71 cm
‐ 木垂重衣 ‐
身丈(前) 約 112 cm
身丈(後) 約 40 cm
身幅 約 32 cm
紐丈 約 81 cm
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水瓶座の新月を迎えたと手帳で知りえ、昨日を想った。夜更けに目が覚めて用足しに回廊を渡ったさき、茅葺く家の縁(へり)部分に張り出して設けた古材米松で敷いた通路に立って空を仰ぐと、満点の星々に魅せられてその場に坐したほどの澄んだ綺麗さ。今思い返すとお月さんの不在で、そのほかに日ごろ感じきれない星芒を僕の目がとらえただけのことで、けれども天に現れるさまざまな文様や光ったりすぼまったり揺らいだりする星の現象への好奇心は身に霊気がやどったかのような生き生きさ、その巡りが朝方針をすすめる心持となって心地好く内側を照らしてくれていた。
太い畝の肌心地のよいすべりを下向けに統一して衣形の思考にしずみ入った。布幅分目一杯を袖の切り替え部分として脇からあばら骨付近にかけてゆるやかに円をえがきながら自由裁断。畑の畝のような、そんなことを考えているうちに畝にできるだけ切り込みをいれたくなくなって、そのまま裾広がりの形をあたえて鋏痕がないように。前身頃の中心に接いだ線が丹田付近までありますが、これは必要な縫製ではなく昨日目にした星の意を、北但馬地方の古民家から授かった天蚕糸を二本どりで装飾波縫い。そのほかすべてのコール天漆黒色から見え隠れする手縫いの連なりはこの天蚕糸で。ポケットは外側に備え付け、紐で結む代わりとしての ”木垂重衣” を制作。両面使いであって片方を天龍社のコール天、もう片方を隣産地でもある遠州の起毛木綿の合わせで。紐の内部に尾州の毛糸を四本どりでひそませて膨らませる。同じく紐通しの輪も同行程で縫い付けた。表地が遠州の起毛木綿である場合、紐通しの輪に通して折り返して背で結わえるやそのまま前で結わえる。表地がコール天の場合は裏地の紐通しの輪に通して表に結わえた紐が見えない仕様です。木垂(こだる)とは現代語垂れるの古語の一つでもあり、枝葉がしなだれる様子は暮らしでよくよく目にしており、その風雅な佇まいには惹かれるものがあるため衣服の名にもちいました。
一点物の衣、ご縁がありましたら幸いです。