二〇二二年 如月 新月
道脇にみえている草が、ふゆの風景にはなくなる。
しろい雪が土におおいかぶさって、
こはむ [ 山羊 ]のお腹も人の眼にも
なんとなく乏しく冬らしい散歩になる。
そんな時は山裾をよくよく観察しては、
高枝切鋏がとどく枝葉をいただいてきて、
少しばかりのご馳走を一枝一枝だし惜しみながら
こはむのお腹と心を労わっている。
ほとんど葉を食すので、のこった枝はこまめに折って
薪ストーブの焚き付けにするか、樹皮を剥いで染色するかである。
白樫の枝はタンニンが豊富であり、木綿と相性がいい。
遠州で綛糸を茶ノ木で染色された木綿ではあったが、
もう少し濃度を含ませたいと思ってい、たまった樹皮で染めていた。
茶ノ木もタンニンが潤沢なので、下地染によく多用されるが、
二種のタンニンで下地染には十分満たされた焦香色となった。
白樫は、樹皮以外に実 [ 櫧子 ]、葉[ 櫧葉 ]も
薬用とされているところを見ると、人と樫のかかわりに長い息を感じとれたし
こはむは直接その効能を身体に流しているのだから、
動物と樹木の親和性はなんて心地いいんだろう。