二〇二二年 神無月 新月
先日ある取材であらためて家の中に持ち込んだ草、
身の廻りをとりまく草達を見わたしていた。
それらはもっともたわいもない只事として
生活に溶けていたけれど、
僕からすると確かにもっとも好ましやかな美しい只事であり
妻の愛さんが草とたわむれた光る実証であり
誰に見せるでもない家族の毎日の眼の栄養や
小さな幸福が堅牢な一破片として今、
ここに存在している。
青白く発光する風の午後、
自家製の道具に包まれながら
自家製の洋梨林檎パイを食べて
畑の草茶を飲んでいたら幸福が込み上げてきて
書き留めていた覚書。
生活が愛おしい。生きる糧が散りばめられている。