二〇二三年 九月 八日 白露

与謝絹山襞二衣

布 : 絹平織( 経糸 / 絹 、緯糸 / 絹、トリアセテート混 ) [ 丹後 ] 、 古布木綿 [ 昭和初期 ]
手縫糸 : 生糸撚残糸[ 丹後 ]、泥染木綿糸[ 会津 ]

身長 160 cm [女性]

〈 身衣 〉
前身丈 約 121 cm
後身丈  約 125 cm
身幅 (脇下)約 62 cm
身幅 (裾)約 108 cm
肩幅 約 46 cm
袖丈  約 57 cm
袖口囲 約 21 cm

〈 前掛 〉
横 約 60 cm
縦  約 80 cm
紐丈 約 65 cm

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周囲の秋の光彩を吸って、深くこころあたたかにして身の廻りを讃えています。太陽が真っ向からやってくる季節は暑くてけだるい。でもそれはそれで動けば動くだけ身体からぬける水分が爽快で冷たい水や果実櫁のサイダーがたまらなかったりする。今年の夏もよくよくよく動いた。廊下の古瓦を仕分けから割り付け葺いた。茅葺き屋根住居の外壁に郷土の発酵土二度塗り、床の一寸の杉板を地元の製材所から仕入れて床張り、内壁はシルクの不織布を仕上げに貼るのでその下地張り、棟梁が見本で置いてってくれた窓建具を追加で二個製作してお風呂の古観音戸、古窓建具、トイレの古建具の調整と取っ手を思考した。廊下から地続きに茅葺き屋根の下に縁側がほしくなって雨落ちにかさならない所まで床をのばした。礎石は敷地にころがってる花崗岩のかたまりを十個据えて、そこに明治期の古民家解体で蒐集したホゾありのままで栗や檜の古材を束柱にして大引と根太は廊下と母屋であまった檜をつかって足りない分は製材所の裏倉庫にある好きに持ってけゾーンにある米松を腐っている部分を落として使用した。床板は雨が吹き込むので製材所で十数年油を染み込みつづけた米松をステンレスの丸釘でとめた。お風呂の内壁に水がかかる所のみタイル代わりに古瓦を目地なしで長州風呂の楕円もゆるやかに曲がっている平瓦が功を奏した。くすんだ銀色のいぶしをかけられたかのように重厚な壁に、自宅の風呂という質素さがなくて苦笑いした。床の洗い出しは御浜の五分と土色モルタルで仕上げ風呂の入り口のステップにその辺でころがっていた楕円の愛らしいのを据えた。まだまだ思い出せない細やかなこともたくさんあった。こうやって振り返ると忙しない日々と感じるが夏らしい生気に誘われて自然物とおなじに満ちた心身だった。かといってどんな日もこんなふうではなくて感情の浮き沈みはつきものでやりきれないときもいくつだってある。そんな人間の運命をできるだけ歓びいさんでいるような人生がいい。だから美しいと想う世界を創造してその中で汗をかいていると本当に歓ぶ心が内側でわかる。自然相手に身体を適度に動かして心の具現化としての衣制作に籠るという一日の時間割を、自分だけの心地好いをさぐることを無意識に三年やっていたので、良い具合を見つけられた気がしてすっかり成長できていた。小学生が夏休みで見違えるほど成長してしまうようなことが少なからず自身にも起こったような。心を静かに喜ばせることができていると実感する日々です。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

丹後織物工業で精練された絹は竹野川の水を汲み上げ加工されている。水は良質の軟水でその水の質が変わると絹の風合いも変化する。丹後絹独特の質感や手触りはその根本が水によって成り立っているとお聞きした。与謝野で出会った平織りの絹はその水を想わせるほどのなめらかさでずっと手に触れていたくなる。絹の落ち感だけではなくハリの感触をだすために緯糸にトリアセテートを採用されている。元々、絹のような光沢と感触を人工で創造したのがトリアセテートなので絹の質感に最も近い。植物由来の繊維であり、針葉樹や広葉樹のパルプ繊維を原料とした繊維素(セルロース)と酢酸を作用させて作り上げ生分解される素材。絹布を使用して制作する時間は特別です。自身の手に触れて気分が上がるものに囲まれて仕事がしたいといつも思っています。それを実行できている歓びがまたたまらなく気分が良いです。古布は隣村の蔵を見せてもらった時に出会った木綿。黒地にくすんだ黄金色で小さく「土」の文字が無数に点在している模様に一目で心摑まれました。見る人によっては違って見えるかもしれませんが。

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この季節にはハイネックを着れるというのが僕は愉しみだったりします。そういう着想から与謝絹山襞二衣は形をおびていった。動作の時に絹が揺れる余分さをだしたかったので幅を最大限にミミまで生かした。前身頃の中心を大きく合わせて布が重なっているように仕立て肩の継ぎめ、首のぐるりは生糸撚糸を残布からほどいた糸で縫った。山襞は妻の手仕事で下絵を描写して丁寧に刺繍する。手首と背の留め具は布包みのスナップボタンを使用。袖と肩の縫い目に少しドレープをきかせた。袖も長めに裁断して手首できゅっと縛ることで上腕の付近に球体ができる。そのふくらみはイメージ通りではあった。背は互いに布を良い塩梅で折り曲げて縫い込み立体裁断で調整することで留め具が納まり、下部にかけて中心に向かってドレープがきいている。前掛けは幅三十五センチを二枚適度な位置で合わせて帯でとじた。帯代わりに前掛けをといったイメージもあります。紐が両側に二本ずつ、計四本あって用途はこれといってないのが特徴でしょうか。垂らしておいたり、二本を両方結わえたり、前掛けも着ける位置で印象を変えて鏡の前で遊んでみて下さい。前掛けの裾には同じく与謝野で仕入れた絹に白地絹を二十一本の針でニードルパンチして起伏させました。星のようです。

 

布が残り少量で生産されていないので手元にある分は制作致します。丈詰めや袖の調整も御相談下さい。

ご縁がありましたら幸いです。

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