二〇二三年 六月 十三日 芒種

光綿亜民黄水短衣

布 : 綿 [ 播州 ] 、 亜麻 [ 湖東 ]
手縫糸 : 白金糸

身長 160 cm [女性]
前身丈 約 65 cm
後身丈  約 71 cm
身幅  約 55 cm

袖丈  約 45 cm
袖囲  約 43 cm

¥ 38,000 + tax

播州織は兵庫県西脇市にて発展した織物の地場産業。綿で薄手の先染め織物が得意で染色に不可欠である豊富な水資源 ( 加古川・杉原川・野間川 ) に恵まれていたことが播州織物が二百年以上栄える基盤となっている。水無月の初旬に西脇の各工場に行き、各工程の分業を一つ一つ拝観、そこに関わる人員や職人の桁違いに( i a i は夫婦二人で )あっと驚きつつも、そこから生みだされた布に触れたときに動かされるものがあるから人の作るものは尊い。ただ、それだけの規模感で稼働しているということは日々生まれる布の量も、川に流れる化学染料も多大ではある。けれども思っていたより厳しい基準値や条件を設定して環境負荷をかけないように試行されていることに胸を打たれた。そういった諸所の事実は百聞は一見にしかずと言ったように動いてみて肌感覚で伝達するもの。尊い学びであった。しかし今の気持ちは様々な工程を経て生まれる新しい布で表現する方法よりも、やはり今までと同じく行き場所のなくなった布や古衣に、より熱く眼差しを向けたくなった。そうやって倉庫から持ち帰った承和色の薄手綿は反応染料であるからと今までなら手に取らなかった布だが、今あらためて衣服を初めて作ろうと思った二十歳の初心(うぶ)な頃の雰囲気をかみしめようとしている僕は、単純に綺麗と感じたことを受け入れることができて持ち返った。たとえば衣服の素材や、何で染められているのかが衣服を選ぶ基準ではなかった頃の、ただ見ているだけで心が動いたり、嫌なことがあってもその衣服を装えば一気に楽しくなって見ている世界が一変するような。衣服と心の縁というか結びつきのそういう不可思議な力に魅せられた自身の、衣という神秘をもう一度とらえなおしていこうという思いに駆られた。理由はわからない。ただそういう想いが内底からどっと湧いてきたから仕方がない。また流れのままに浮きつ沈みつ流れてゆけばいい。それと同時に草根木皮染や樹皮、雁皮繊維採取から着想された物のより深部に潜りたいという想いも相乗してより強まった。囚われを見つめ直すことで内在する原石の未だみぬ部分が発光するような気配がある。なきうみという場所で新たに生活を作っていく時にこういう思惑はうってつけだと思い、中庸に立って物事を再確認していく。自然繊維も化学繊維も草木染色も化学染料もすべては地球からうまれたものであり、星で繋がった人同士の交歓をどういう心をもって受けとっていけるかだと思います。ただ心地よく在れる自身のために、感謝と愛で受けとりたい。循環できる衣服の提案は勿論大切な思想ですが、そこが発端で始まった i a i ではなく、装う歓びや歳をかさねた身体も美しいという生命観や死生観までもが感じられる衣という存在が大好きではじめたこと。自身がそのファッションに生かされた時の感覚、その初歩に立って手を動かしはじめた最初の衣です。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

薄手の布で軽やかな衣服をイメージしていました。光にあたるとてらと発光する布を見つけたことでより具体的な形がみえてきて裁断を一気に行った。胸元の留具装飾はトルソーにあて何度も立体で進行した。藍染だと色落ちと色移りの心配があったので紺色で反応染料の湖東亜麻布を所々に用いて意匠した。留具の鉄丸釦は中国少数民族の古着についていたものを解いて使用。

ご縁がありましたら幸いです。

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