二〇二六年 四月 二十九日
布 : 節木綿[ 播州 ]、厚節木綿[ 泉州 ]
手縫糸 : 苧麻双糸 [ 天龍社 ]
染 : 柿渋 [ 生薬 ・ 柿漆 ]
被写体 / 身長 160 cm
身丈(前)約 120 cm
身丈(後)約 124 cm
裄丈 約 66 cm
袖元囲 約 26 cm
紐丈 約 150 cm
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早朝のなきうみを歩く。昨日伐った烏山椒(カラスザンショウ)の白い木目と漆黒の年輪の対比が美しい。近くを通ると少し柑橘系の香りがまだ残っていて、刺々しい樹皮をめくるとまだ水分はたっぷりと含まれている。池の対岸から居住地を見渡すと、枯れた松を間引いた箇所を風が通り、その先の欅(ケヤキ)の若葉や、栗の花を揺らしていた。池縁の石積みにびっしりと生える篠笹を草刈り機で刈りとったので、水面には今も草が浮いていて、その間を鴨の親子がすいすいと泳ぐ。池の深度があるほうに菱(ヒシ)がたっぷりと円を描いて水面に蕾を浮かせているので、カヤックで沢山抜いて、乾燥させたものを軒下に取り込むのを忘れていた。根が美しい菫色だったので、染色を試してみようと採取していた。ひとしきり歩いて、コップ一杯の地下水を飲む。そして、今こうして文章を書いている。自分が暮らす環境を凝視することは、こうして日々あたりまえに過ごしていることにも、あたらしいことが溢れていることに気づくための一つの方法だと思える。何も考えずに歩いたり、眺めたり、立ち止まったり、触ったりを力まずに呼吸も深いまま、実践できる場所を僕は生活以外では知らない。この環境と身とが、ひとつづきであるという体感から居心地の良さを覚え、その力みのない幸福感で、布の裁断に入る。
播州織の節(ネップ)のある木綿なのに素朴な風合いではなく、艶のあるサテンのような質感です。涼やかな透け感が少しありますが、前身頃、後身頃ともに布巾いっぱいを折りたたむように襞を入れ込んだので、布が重なった部分は透け感はなく一着で着用できます。先染織物の布に、南山城村で生産され酒蔵で発酵させた柿渋を、地下水で薄め二度重ねて染色しています。仕上がりが深みのある朱色を帯びて、節の黒ネップが際立ちます。直垂を太ももの上部分までの長さに抑えることで印象が軽く、ウエストラインで湾曲に鋏を入れて、同じく柿渋で染色した厚みのある木綿を縫い付けて景色に変化をもたせました。備え付けの紐を直垂の上や、下にいれて結わえて印象を変えるのも楽しいかと思います。
どうぞ、ご縁があれば幸いです。