二〇二三年 一月 十八日 

毛羽雲包羽織

布 : 起毛木綿[ 遠州 ]
手縫糸 : 和紡五倍子染糸 [ 尾州 ]

身長 160 cm [女性]
身長 160 cm [女性]
身丈 約 112 cm
身幅  約 96 cm

ポケット(深) 約 30 cm
ポケット(幅) 約 20 cm
肩囲 約 70 cm
紐丈 約 150 cm

¥ 48,000 + tax

雲からうまれたような風景のなかを歩いていた。足をつかって、ただひたすら前へすすむ。白い息に水分と、呼吸にやどる生命感をうけながら心の皮膚に湯気がたちこめ、心の眼はゆゆしく冷たい自然、明かりがうすく暖かをはじめた家、親雪がとけた水流音を感じながら粉砂糖のような山のてっぺんを追っている。身体の内に射こまれる万物の流れ、そのなかにたった一つの星(個)を生きているなどとよくこういう事を考えてしまう自分が今日も自分をしているなあと思いながら、考えるとかいうことをしないために歩いているんだったと我にかえって、つぎの歩にはからっぽを心がげた。今年の自分なりの目標の一つに、ただ立っているとか、ただ眺めているということをしたいがある。そのいとなみに心をそそげていた幼さの頃に還ってみてもいかが?とたましいからの呼びもどしがふいにわきながれ、あの頃の何もなさを、ぽーっとしながら こてつ(昔一緒に暮らしていた犬)を撫でていたときの温かいてのひらを想いだしていく時に今あります。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

布は前回の一日一衣で紹介した微起毛の馬布と性質が違い、甘撚り糸を用いてオックス(平織り)で織られている。甘撚りに起毛されているので、カシミヤのような風合い。布に柔らかなコシもあるので羽織に風がはらむときにみせる全体の布動きに冬のおもさがかさなる。憲法色の緯糸に白鼠色の経糸で織られているので、表地に見える表情は全体的に鼠色ですが、起毛の奥の土台に茶褐色を感じる。前身頃の中央からそれた箇所に、前回使用した馬布の裁断残布を当て込みました。

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おおぶりな羽織を作りたかったので、妻と二人で愛用している冬の羽織から着想を得て裁断した。とはいっても型紙におこすとかそういう技をつかうわけでもなく、一点物のおもしろさがつまった自由度で手尺と皮膚感覚を頭のなかに描き縫い合わせる。前身頃に少しからくりがあり、肩付近から脇腹にかけて深いポケットへと地続きの馬布を入れ込むことで結わえたときの立体感がでた。残布そのままを活かしたかったから後身頃と前身頃の布幅にずれが生じ側面から、また前から見た時の印象が変わる。背の裏地に腰紐を支えるループがあり、結わえたいときは肩口の脇下から紐をだして前で結わえると雲に包まれているような感じをうけたので衣の名前をそうした。着想から得たように男女兼用で纏えるのが醍醐味で、女性や男性といった身体性をこえて、また老若男女とわない衣という曖昧さが滲む在りように、自分らしさを感じました。

ご縁がありましたら、幸いです。

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