受注制作 [ 受付期間 二〇二三年 六月三日  ‐ 六月三十日 ] 

茶藍雨祝結単衣

布 : 甘撚木綿 [ 遠州 ] 、 亜麻苧麻布[ 湖東 ]
手縫糸 : 茶藍甘撚木綿残糸 [ 遠州 ]
染 : 遠州藍 [ 生薬 ・ 藍葉 ] 、茶ノ木 [ 生薬 ・ 茶葉 ]

身長 148 cm [ 女性 ]、身長 160 cm [ 女性 ]
前身丈 約 120 cm
後身丈  約 125 cm
身幅  約 60 cm
身幅 ( 裾 )約 90 cm

肩幅 約 120 cm
前身スリット  約 20 cm
側面スリット  約 15 cm
紐 約 115 cm

¥ 45,000 + tax

野兎を見た。お茶の小休憩にその時は突然やってきて、妻が高ぶる心でそのままを声にのっけてきたのであわてて横に眼をやると本当にすぐそこを、何事もないようにそっけなく無風の表情でぴょんと跳ねていた。今まさに天からほいっとおくられたかのように。兎はご縁あって新居に引っ越したら迎えられたらいいねとかずいぶんと前から言っていたこともあるけれど、言霊という神性にまたもひきよせられた。水辺に眼をやれば鴨も泳いでいる。コマドリやイカルの美声も樹木に木霊して鳴っている。地元なのに初めての発見が星のようにある。在ったのに見ようとしていなかっただけのこと。引っ越しを機に、自然現象や動植物の生活の観察を略記していこうと思う。気づきをふやしてゆけたなら、暮らしにも作品にも奥行きが生まれる。何より一層楽しい人生だ。植物と染色にたいしての新しい扉は今まさにひらいていて、湯薬や香木も染色精神には欠かすことのできないもの。重厚で、素朴で、まっすぐに自分の世界をひらいていくのに不可欠な住まう環境。だから特別な愛をもって、心を与えなくては土地にただよう心は獲られない。今日も夫婦で住を整えます。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

茶藍甘撚綿布は先藍染めを中心としている遠州染織から。茶ノ木で染色した糸と藍で染色した糸を二本で甘く撚ったものと藍の濃淡をそれぞれ組み合わせて甘撚りしたもので構成されているので先染め特有の布の存在感が漣んで厚みはあるけど涼しい仕上がり。「先染め」は綛糸の状態で丹念に染色を積み重ねその一本一本の糸の持つ色や風合いを生かしながら縞柄や変わり織りなどで織りに変化を持たせ生地として生まれ変わらせていく技法の一つ。機織り工場の直ぐ横に生命の匂いを感じる藍甕が数十個整然と並び、綛糸を浸ませる出番を待っている。注いで生命を絶やさないように繋いでいるから色の濃度が濃い。僕が畑で育て、発酵灰汁藍建てを拵えた淡藍もとても美しい青を与えてくれるが、やはり威厳のある濃度も眼が触れると高鳴るものがある。自身の純度でできること、潔く人にゆだねること、その表現のめりはりが今の心の真ん中に心地好い。濃茶の亜麻苧麻布は滋賀の湖東産地で織られた。素材の原生は中国の湖南省。経に紡績亜麻糸、緯に紡績苧麻糸で織り込まれたものは約四十年前に織られた布。

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白雨が水面を突くところや、水無月の夜々にひびく雨音を耳心地に眠った昨日があって、朝の珈琲を淹れてからすぐにとりかかった。布は眠りにつく段階でこれと決めていたものがあったが、際立たせるために浮かんだのが黒鳶色の湖東麻。最初は、初夏だから簡素な貫頭衣でもと頭に描いていたのも束の間、後身頃の留め具部分を制作している時に長いめに裁断していた湖東麻を淵に使用したらこのまま伸ばして垂らした方が美しいとなってしまい、あれよあれよと方向性が決まって湖東麻の使い方が整った。単衣ではあるが首から胸元にかけて着物のようにかさねてみせることで単調で簡素な装いになりやすい初夏に単衣でも愉しめるあつらえを。前身頃の袖はあばら骨付近に切り込みをいれて下部に襞をあつめ、上部は重力で落ち歩くとゆらゆら揺れる袖の雰囲気もありだなあとそのままに。後身頃は肩甲骨あたりで茶藍甘撚木綿から湖東麻に切り替えて襞をつくった。前と後ろの袖が全く異なる。ポケットは左右で、下部にスリットを両側面、前身頃にいれているのいで動き易い。インナーに簡素な肌着一枚で合わせるだけで楽に纏えるし、少し肌寒い時には肩周りを大きめにとっているので袖にボリュームのある短衣も合いそうです。前身頃は厚肉の茶藍甘撚木綿ですが甘撚りなので通気性がよく、後身頃は一枚布だと透け感があるので湖東麻を二重に仕立てました。

ご縁がありましたら、幸いです。

※ 受注制作 [ 受注期間 6/3 ‐ 6/30 ]

今月から、月毎に受注制作する一衣を設けます。水無月ノ衣であれば期間は六月中のみの受注となります。なので一日一衣は月毎受注制作の衣 + 一点物 に分けての更新ということになります。季節月毎に定番をさぐりたいという創意がわいてきたのと、いつもとらえては消えをくりかえす一点物をゆっくりと身に沁みこませてゆく所作を体感したかったのと、一衣のみの受注制作に身体が慣れてきたら、作品展という大ごとでなくても各地で iaiの衣に触れていただける機会が設けられるような気がしたからです。やはり手に触れていただけてこそ感じとれる些細な雰囲気があるので、そういったことにも精神がのびのびとしている今、同じ心の人と人との再会やめぐりあいをはじめる準備を一日一衣から徐々にしていけたらと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

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