二〇二三年 九月 十一日 

赤丹与謝山襞割烹二衣

布 : 絹綾織( 経糸、緯糸 / 絹 ) [ 丹後 ] 、 近江赤麻絣[ 明治末期 ]
手縫糸 : 生糸撚残糸、赤茶刺繍生糸[ 丹後 ]

被写体 / 身長 160 cm [女性]

〈 身衣 〉
前身丈 約 128 cm
後身丈  約 130 cm
身幅  約 70 cm
肩幅 約 45 cm
袖丈  約 48 cm
袖口囲 約 21 cm
紐丈  約 75 cm

〈 前掛 〉
横 約 30 cm
縦  約 55 cm

¥ + tax

なきうみには黒土の火山灰土壌が広がっているがその下には粘土層の丹土がある。これらが藁や山水と発酵されて郷土の土壁となったものを僕たちはまた砕いて濾して冷鉱泉と藁で発酵させて家に塗った。丹土に何度も触れるたびに色彩感覚がひらかれ、もともと丹(赤)にそんなに惹かれないでいた僕にも好きな赤色ができた。丹後で出会った絹布はまさにその好きな赤丹色で、先染めの反応染料ならではの楽しみといったら日々の洗濯でゆるやかな経年変化にとどまり色落ちしにくいところ。僕は草木根皮染のもつ崇高さや、もはや生活と同一線上で親密な関係性ならではの植物や鉱物での染色を好んで実践していますが、人知が進んで世の中がひらけた技術で物質的にも精神的にも生活が豊かと感じることを選びとることもあっていいと思っています。僕の場合はこの色味のまま皆様にお届けしたい気持ちを選びました。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

丹後織物工業で精練された絹は竹野川の水を汲み上げ加工されている。水は良質の軟水でその水の質が変わると絹の風合いも変化する。丹後絹独特の質感や手触りはその根本が水によって成り立っているとお聞きした。与謝野で出会った平織りの絹はその水を想わせるほどのなめらかさでずっと手に触れていたくなる。絹布を使用して制作する時間は特別です。自身の手に触れて気分が上がるものに囲まれて仕事がしたいといつも思っています。それを実行できている歓びがまたたまらなく気分が良いです。近江赤麻の絣は着物をほどいて反物にし直した。赤麻(苧)は苧麻と同じイラクサ科の仲間で赤みがかった茎からとりだした繊維を緯糸で織るため絣の色が赤茶色になるのが特徴です。赤丹色の絹布で制作している時、桐箪笥に近江赤麻があったことを想いだして引っ張りだした。

i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」

前回紹介した与謝絹山襞二衣を制作して間もなくにとりかかっていたので与謝絹山襞二衣に着想をえて手を動かした。割烹着のように後姿を美しくみせたかったので前身頃はできるだけ簡素に平たくした。しかし布を合わせる位置を見定めて裁断するときにミスタッチをしてしまい変な部分に裁断痕を残してしまった。しかしそれを生かせばいいとひらきなおり、有機的に胸部をなぞった。それを立体で微調整して首から裾まで中心を手縫いで巻かがり縫い。襟中心と袖元、後身頃の片側のみに近江赤麻絣を使用した。後身頃の近江赤麻絣でパイピングした片側のみ布を寄せ集めて小さな襞を作った。これは紐で結わえた時に重なりが美しく見えるからそうした。山襞と呼称するスモッキング技法によって布に陰影が現れている。これは妻の手仕事で下絵を描写して丁寧に刺繍したもの。手首と背の留め具は布包みのスナップボタンを使用。前掛けは暖簾のようにループがあって割烹衣で結わえた紐をその中に通して結わえる。やはりこの手拭きみたいな布を同素材で合わせるだけで印象ががらっと変化するので是非試してみて下さい。実際に手拭きとして、前掛としてどんどん汚すのもいいと思います。手縫いの箇所が多い分縫い合わせた箇所がふっくらしてまろみのある衣に仕上がりました。

 

布が残りわずかで生産されていないのですが手元にある分は制作致します。丈詰めや袖の調整も御相談下さい。

ご縁がありましたら幸いです。

赤丹与謝山襞割烹二衣 | i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」
i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」 お問い合わせ | i a i / 居相 - Earth clothes - Based in mountain village / Japan.「 一日一衣 」