二〇二四年 十二月 十九日 大雪〔 二十四節気 〕 / 寝待月〔 月 〕
布 : ( 厚 ) 別珍 [ 天龍社 ] 、羊毛[ 尾州 ]
手縫糸 : 象牙色絹糸[ 丹後 ] 、天蚕糸[ 北但馬 ]
被写体 / 身長 160 cm
身丈 約 126 cm
身幅 約 68 cm
裾幅 約 104 cm
裄丈 約 62 cm
袖丈 約 45 cm
肩幅 約 42 cm
紐丈 約 55 cm
¥ 68,000 + tax
静岡県の天龍社繊維産地は天竜川以東から成る別珍・コール天の生産地。明治中期から天龍社を発端に大まかに剪毛・カッチングと、仕上げの毛焼き、染色工程を経て、天からふる光がすべるような光沢感の木綿布が現れる。布との出会いは自らが動くことから縁はつながれ、移動した季節が影響する心の機微で手にとる素材は今の自身そのもの。今回は大きな一歩を踏みだせた個展を終え、力みが緩んだ冬の入り口にたって無性に別珍やコール天に触れたくなって家族で静岡に向かった旅路で出会った漆黒の厚みのある別珍。コール天と同じく表面に毛羽や輪奈を出した滑らかなパイル(添毛)織物ですが、畝のない凪いだつややかな布を別珍という愛くるしい名で呼ばれている。
厚みのある別珍素材の主体は木綿の緯糸にポリウレタン繊維を二%の混率により、厚みはしっかりあるのにもかかわらず低伸縮で可動域に負荷がすくない。布幅を最大で襞山(スモッキング手法)を前身頃と後身頃でふんだんに施すのは妻の手仕事。上下だけ指定してあとは出来上がってきたものに僕自身が反応して衣に成してゆく。週末に廊下から榎の梢からみえた満月を主に、ひろがる十二月の冬の星々の配置を別珍の漆黒のなかに感じて心象をなぞってゆく。首元は谷字で、北但馬の古民家の屋根裏に燻され出番を待っていた黄白色の天蚕糸を土地の冷鉱泉ですすいだもので縫いつける。脇下の後身頃に襞をつくりその延長に羊毛糸を中に詰めた丸絎紐を取りつける。袖元にかけて異形ですぼみ、端は天蚕糸でまつる。品のよい光沢と衣形、漆黒の多用途色ということで礼服としてもお召しになれるかと思います。私たちも娘の入園、入学で共にしました。
ご縁がありましたら幸いです。